平成29年度林野庁補助事業 発電・熱電併給等推進のための調査

弊社では、平成29年度林野庁補助事業(木質バイオマス利用支援体制構築事業のうち発電・熱電併給等推進のための調査)を担当し、国内における木質バイオマス発電の実態を明らかにするべく、調査を実施致しました。
結果の概要については以下に記載します。
報告書本編の電子データについてはこちらよりダウンロードしてください。
⇒『平成29 年度木質バイオマス利用支援体制構築事業のうち発電・熱電併給等推進のための調査報告書

<本調査の背景・目的>
2012年の再生可能エネルギーの固定価格買取制度(以下、FIT)施行以降、全国で木質バイオマス発電所が数多く建設され、計画段階のものも含めるとその件数は調査実施時点で210件以上になると見込まれている(株式会社森のエネルギー研究所調べ)。
しかしながら、運転の状況に関しては各発電所の所掌範囲であり、各発電所の課題等は体系的に整理されていない現状である。
そこで、本調査では国内で運用されている木質バイオマス発電所の運用状況やランニングコスト、課題を明らかにし、木質バイオマス発電事業の安定稼働に資する取りまとめを行うことを目的とした。

<調査結果概要>
FIT施行当初から多くの発電所が運転を開始している蒸気タービン発電については一定の事業性をもって事業運営できていることが明らかになり、各発電所で燃料調達やランニングコスト削減等において様々な工夫が行われていることが分かった。
ガス化発電に関してはごく小規模のプラントを試験的に導入している事例が多く、事業採算性は低い状況であり、現時点では黎明期であると考えられた。今後は事業性を高めるために、例えばプラントユニットの連結によるスケールメリットの創出等が必要であると考えられる。
燃料供給に関して、木質バイオマス発電は地域林業の視点から見ると、大きな木材需要を生み出している。発電所の運営を考えると、原材料コストを抑えることは重要であるが、原材料コストを下げすぎると地域林業への影響も大きくなる。一方で、原材料費が高騰し、木質バイオマス発電所の経営が立ち行かなくなると、これも地域林業に大きな打撃を与える。
また、バイオマス発電をはじめとした木材需要の高まりに応じて、林業自体はこれまでの間伐中心の林業から主伐へ移行しつつある。特に木質バイオマス発電所が多く立地する地域では顕著になっており、皆伐後の再造林や資源管理を計画的に行うことが重要である。
さらに、他産業への影響も考慮すべきである。特に畜産用のおが粉に関しては、公益社団法人中央畜産会の報告では、「木質バイオマス発電の需要増大等により、地域によっては、供給量の減少や価格の上昇がみられる状況」(2016)とある。木材は木材加工業だけでなく、様々な用途で使用されているため、こうした周辺産業への影響も考慮されるべきであり、発電所、地域林業、既存産業が事業継続できるような価格的・量的に調和のとれた資源利用を進めることが重要である。
国内の木質バイオマス発電事業は発電のみの大規模事業が先行、安定して事業を行っており、総エネルギー効率の高い熱電併給事業は残念ながら普及に至っていない。森林資源の有効活用や地域エネルギー自給の観点から、熱電併給事業の普及は重要なテーマであり、持続可能な資源利用のためにその使い方と作り方を十分考えていく必要がある。